税務や会計に関する書類はいつまで保存すればいいですか

10月下旬となり今年も残すところあと2か月となってまいりました。そろそろマイナンバーの通知が各家庭に届くころではないでしょうか。来年1月の施行を目前にして事業者にとっては、その取扱いに関し疑問や不安が出てくる頃かもしれません。
 毎年、決算・税務申告の度に、関与先の方から「税務や会計に関する書類はいつまで保存すればいいですか」と質問されます。特に今年は、マイナンバー制度と絡み同種の質問が更に増えつつあります。そこで、今回は従来からの税法上の取り扱いと新しい番号法上の取り扱いについて見ていきたいと思います。

■税法上の取り扱い
 所得税法・法人税法・国税通則法等の税法で定められた会計帳簿等の保存期間はその年の確定申告書の提出期限から原則7年間です。
 保存期間が定められている会計帳簿等には次のようなものがあります。

(所得税法施行規則、法人税法施行規則による)
決算書・総勘定元帳(会社法では10年と規定されている)
現金出納帳・預金出納帳・振替伝票・仕訳帳
売掛帳・買掛帳
各種契約書・請求書・領収書
預金通帳・棚卸表 など
その申告書の提出期限の翌日から7年間保存する必要があります。

 また、保存期間が定められている源泉徴収義務者が保存する申告書は次のようなものです。

(所得税法施行規則による)
給与所得者の扶養控除等申告書
給与所得者の配偶者特別控除申告書
給与所得者の保険料控除申告書
退職所得の受給に関する申告書 など

 これらの申告書の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存する必要があります。

(国税通則法によるもの)
源泉徴収票
提出期限である翌年1月31日の翌日から7年間保存する必要があります。

 例えば、平成26年分の所得税の確定申告に関する会計資料は、平成27年3月16日からの7年間ですので、平成34年3月15日までということになります。それ以降について保存義務はありませんが、その後保存していても何ら問題はありません。

■番号法上の取り扱い
 一方、平成28年1月から始まるマイナンバー制度では、特定個人情報(番号つきの個人情報)について、行政機関等に個人番号を記載した書面を提出するために必要な場合以外は保管してはならないことになっています。
 マイナンバー制度では、例えば、従業員が退職した場合その従業員の個人番号は、すぐに削除する必要があるのです。ただし、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)には、次のように記されています。
「それらの事務を処理する必要がなくなった場合で、所管法令において定められている保存期間を経過した場合には、個人番号をできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければならない。なお、その個人番号部分を復元できない程度にマスキング又は削除した上で保管を継続することは可能である」

 つまり、所管法令(所得税法・法人税法・国税通則法等)で定める保存期間中においては所管法令が優先します。そのため、税務や労務の書類に個人番号を記す場合は、所管法令に規定された書類保存期間中はマイナンバーを削除する必要はありません。
 しかし、その期間(多くの場合7年)を経過後は、速やかに廃棄したり、個人番号部分をマスキングしたりしなければなりません。このように、税務や会計に関する書類で、個人番号のからむ書類は、従来は7年間保存すればあとは事業者の判断に委ねられていたのですが、番号法施行後は、所管法令に規定する年数(原則7年)保存し、経過後は番号法の定めにより速やかに処分することになります。

 以上、ご質問を受けることの多い保存期間について述べましたが、その保存の方法や、管理には、紙ベースでも、データでも取得・保管・廃棄のそれぞれの段階において細心の注意をしなければならないのは言うまでもありません。